見立ての庭



















東京・江東区にある個人邸のお庭を手がけました。

施主様からのご依頼は、ご自宅の門塀や家の外壁などのリノベーション工事をされるとのことで、それと一緒に玄関回りの植栽も新しくできたらというものでした。

日頃からお仕事でお忙しく、こまめなお手入れができないということで、植栽は常緑樹にして欲しいというご要望から、お客様がご希望されたシマトネリコの他に、成長が遅く病害虫も少ないソヨゴをシンボルツリーとして選択致しました。

ただ、常緑樹中心の植栽は、時として季節感の希薄なものとなることがあり、いつもと変わらない風景は、庭への愛着が無くなることに繫がります。常緑樹を用いながらも、季節感のある庭、いつまでも愛着の湧くような庭をご提供したいという思いが、今回の計画の始まりでした。

そこで、光の加減や気象によって表情を変え、時が経るにつれ深い味わいが出る「石」を効果的に使うことで、景観的価値を高めるとともに、鑑賞する者の心象を変え、季節感のある庭ができないかと考えました。

立水栓のある家の右側から左側にかけて低くなっており、それを川の上流と下流に見立て、上流の方には滝をイメージした六方石による創作立水栓や、大きめの割栗石などを使って荒々しさを表現し、鉄平石の乱張りを挟んだ下流の方には、那智石と白川砂を使って、ゆるやかに流れる川を表現致しました。

また、アプローチを歩いて室内に入ることや、そこに座って庭を眺めたり、近所の方とお話しをしたりすることができるように、造形モルタルで作った沓脱石を設けました。

施工前は、都心によく見られる「ただのスペース」としか呼びようのない3坪程の狭小地が、工夫次第で、奥行きと広さが感じられ、豊かな景観を持った「庭」と呼べる場所にすることができ、お客様にも大変喜んで頂けました。

何より嬉しかったのが、施主様のお母様から「素敵な庭を作ってもらって、私も長生きしなくちゃね」というお言葉を頂いた時でした。

今後は、メンテナンスのご契約を頂いたので、これからもっと良くなるよう、努力して参りたいと思います。

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